翌日からの運動療法

・ 示指、中指および環指の手術では、翌日にPIP関節が少し曲がっていることがあります。
・ また術前にPIP関節がひどく曲がっていた(拘縮)場合は、術後はさらに深く曲がっています。
・ それらの関節拘縮に対して、手術翌日から指を平らに伸ばすリハビリ(拘縮除去)が出来ます。
・ 「2mm切開ばね指手術」は翌日からリハビリを行っても傷口が開くことがないからです。
・ 早期のリハビリにより順調な機能回復が望めますので写真と映像で説明します。



◇ 手術翌日の薬浴

○ 温湯で薄めたLAG-10液で5分間の薬浴の後、院長が下記の運動療法を行います。

○ 遠方などで通院が出来ない場合は、自宅で毎朝「給湯水」の手洗いをお勧めしています。さらに時間がとれる場合は、ご自分で軽く運動療法をしてもらいます。
 

◇ PIP関節の屈曲拘縮


  下の例は示指ですが、PIP関節を伸ばそうとしても平らに伸びません。
  この状態を関節拘縮または屈曲拘縮と呼びます。 
手術前のPIP関節
手術翌日のPIP関節
術前からPIP関節が曲がっていて無理に伸ばそうとしても平らに伸びない症例もあります。そのような場合でも、手術中は麻酔の効果で一時的に指が平らに伸びることがあります。 ところが手術翌日にはPIP関節が再び曲がり、自力では平らに伸ばせません。この場合でも、翌日から運動療法を始めると手の機能回復が非常に早いことが判ってきました。

◇当院の術後運動療法

○ 近隣の患者さんは当院で運動療法を行います。
1)手術翌日、5分間の薬浴の後、2通りの運動療法を行います。
2)術後7日頃にもう一度来院いただき運動療法を行います。
3)通常この2回の通院で診療は終了(完治)します。

○ 遠方の患者さんの場合、ご自宅での運動療法となります。
1)運動療法を患者さん自身で行う場合は手加減して行うことになりますがそれでも問題ありません。。
2)水道水や給湯水などに浸してから行うと効果的です。
自分では少し手加減をしてしまいますが、それでもかまいません。
皮膚切開が小さいので運動療法により傷口が広がる心配がないからです。

運動療法により、術前拘縮がなければ示指、中指および環指のPIPは平らに伸びます。

手術の翌日(ビデオ映像より)
手術の翌日(ビデオ映像より)
第1の運動療法は、
 1)MP関節を曲げる
 2)PIP関節を伸ばす
 3)DIP関節を伸ばす
をゆっくりと4~5回行います。

この運動の目的は、固くなったPIP関節包を柔らかくほぐすこと(拘縮除去)です。

ばね指症状が長い期間続くことにより、手内筋は固くなり、また短縮しています。
この指位で手内筋*1が最もゆるむので、純粋にPIP関節の拘縮除去ができます。
第2の運動療法は、前とは正反対の動きです。
  1)MP関節を伸ばす
 2)PIP関節を曲げる
 3)DIP関節を曲げる
をゆっくりと4~5回行います。

この指位により手内筋を最大の長さまで引き伸ばします。またPIP関節を曲げていますので疼痛は軽くてすみます。これにより、PIP関節の拘縮の一因である手内筋の緊張を取り除くことができます。

麻酔がかかっていないので痛みのフィードバックがかかり、「筋肉を挫滅」するほどの拘縮除去とはなりません。
  実は、
運動療法-1-はイントリンシック・プラス指位*1 (Intrinsic Plus position)
運動療法-2-はイントリンシック・マイナス指位*2( Intrinsic Minus position)
と呼ばれる指位を、他動運動で行っているのです。
 

◇ 術後の運動療法の実際


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68才女性、右示指ばね指(ガングリオン合併) #1479
症例(示指の場合)

手術症例 #1479 について、術前・術後の運動療法を編集しました。
 1)手術前の状態
 2)術後1日の運動療法
 3)術後7日の運動療法
がご覧いただけます。

運動療法の結果、PIP関節が曲がった状態から平らに伸びてゆく様子がわかります。

一般的に母指のIP関節には拘縮がありませんので、術後の運動療法は必要ありません。


◇ 術後のPIP関節拘縮の原因は?

 ○ a型拘縮(下記)は手術直後にPIP関節が平らまで伸びますが、翌朝に再び曲がっています。
     皮下組織と滑液包(腱)との癒着が原因で出現します。
     運動療法により早期に回復します。

【参考】 PIP関節の拘縮原因

術前にPIP関節が平らに伸びない原因は3型に分類できます(湯本、2014)。

  a型拘縮: 結節Pによる場合。→最も頻度が高い。
  b型拘縮: 関節包が自体が短縮して可動域が低下。→比較的稀、病歴の長いばね指に多い
  c型拘縮: 結節DがA2腱鞘の近位端で遣えて末梢へ通り抜けられない。→稀な原因。

臨床的に最も多いのはa型で運動療法が非常に効果的です。
実際にa型、b型、c型が混合した拘縮の場合は、術後の経過が少し違ってきます。


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