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ある日の手術風景 - その1- |
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1 | 母指 | b型ばね指 | |
2 | 中指 | ロッキング症例、術前35°のPIP屈曲拘縮 | |
3 | 環指 | 弾発、ロッキングはないが指が深く曲がらない症例 | |
4 | 中指 | A1腱鞘が2分割の症例、浅指屈筋腱に結節Dと結節Pあり | |
5 | 母指 | a型ばね指 | |
6 | 示指 | 比較的少ない示指ばね指 | |
7 | 手根管 | 手術時間8分05秒(皮膚切開~縫合まで) | |
8 | 中指 | PIP屈曲35°、第2の皮切でA2腱鞘?を切開した症例 | |
9 | 中指 | 結節DがA1と離れていて、屈筋々腹を絞ると弾発出現 | |
12 | 【雑感】 | 診療を終えて、日が暮れて |
【雑感】診療を終えて、日が暮れて(ブログ風) 1 今日は、ばね指8名と手根管1名の手術を無事に終えることが出来ました。 午前に症例1~7、午後2:30~3:30に症例8~9を行いました。 一日の手術内容としては驚くほど多彩な症例がそろい、また発見もありました。 1 母指はそれぞれ異なるa型b型であった(症例5、1) 2 A1腱鞘が二分割しており2回の腱鞘切開を要した(症例4) 3 A2腱鞘?を切開するために第2の皮切を要した(症例8) 4 浅指屈筋腱上に2つの結節D、Pをエコーで描出した(症例4) 他の症例の所見はコメント欄に記載の通りです。 当院の「2mm切開ばね指手術」で術前・術中・術後に行っているエコー観察により、これまで知られていなかったばね指の病態も観察されています。 ※ ばね指の手術予約が多い月は臨時で水曜日の午前を手術日に充てています。 2 「私一人で、これだけ多くの手術を短時間で行った」と自慢をしているのではありません。腱鞘切開のためだけに生まれてきたような器具「ガイドナイフ」の助けを借りて初めて可能となるのです。。 ばね指手術の歴史の中でガイド・ナイフの発明が最も画期的な進歩をもたらしたと、私は考えています。もしガイド・ナイフがなければ、これだけの数の手術を安全・確実かつ短時間で行うことは出来なかったと思います。 全国共通の一般的ばね指手術では皮膚切開が2cmほど必要です。皮膚を切開すれば簡単に内部が観察出来そうですが、実はそうではないのです。 創周囲の皮下脂肪が迫り出して腱上部を覆いつくし、内部がほとんど見えず、手術を続けることはできません。そこで開創鉤の出番となるのです。 助手が開創器を操作して腱を露出させている間に術者が腱鞘を見ながら切開を行います。この時開創器の圧迫による皮膚・皮下組織の挫滅が避けられません。創縁少なからず挫滅するので、術後の創治癒までに2~4週間を要します。 当院のばね指手術は皮膚切開が2mmで手術時間は実質3秒です。ガイドナイフのおかげで皮膚・皮下組織の挫滅がほとんど起こらないことが早期回復の理由です。この手術手技が一般的なばね指手術との最も大きな違いです。 3 ガイド・ナイフの利点(ばね指の場合) ①手術が安全・確実というだけでなく、手術時間が短縮できること ②切開創が非常に小さくて済むこと したがって、 手術の翌日からは洗面器に汲んだ水で手洗いができます。 2mmの切開創は術後6日で完全に閉鎖し、水仕事に完全復帰できます。 一方、皮膚切開による普通のばね指手術において、 開創器で切開口を押し広げる(圧迫する)と創縁がびらんすることが知られています。 その場合、縫合不全を起こしたり、切開部位がしこりになる(瘢痕形成)場合もあります。 4 ガイド・ナイフの利点(手根管の場合) 切開創が小さい(1cm)だけでなく、創縁の挫滅がごくわずかです。 開創器で切開口を強く押し広げる(圧迫する)と、創縁がびらんすることは上で述べたとおりです。 5 ガイド・ナイフの手術では日常生活への復帰が早いことも特徴です。 主婦の家事一般、農家、スポーツ、バイク運転、音楽家の演奏復帰などが含まれます。 6 実際には、これらの手術を私が一人で行ったのではありません。 私の手術を支える職員の技量・熟練・先見性に依るところが非常に大きいのです。 目には見えないところで全ての職員の強力があるからこそです。 手術器具の点検・洗浄・滅菌なども安心して任せています。 7 今日は無事に手術が終わりました。 明日、明後日も手術が続くと思います。 8 またリハビリのスタッフは私が手術中にも各部署の仕事を安心して任せています。 9 今後もしばらくの間は、この様な診療が続くのでしょう... 10 今日一日は緊張の連続でしたが、これで家路につくことができそうです。 それではおやすみなさい! 追伸 「2mm皮膚切開ばね指手術」のこと 一般の人からみれば、ガイド・ナイフによる「2mm皮膚切開ばね指手術」は心細い、または信頼性に欠ける手術と映るでしょう。 「目に見えない所で医者がメスを振り回している」と考えるのも納得できます。 これは患者さんだけに限らず、多くの医師にも共通して言えるかもしれません。 その心細さ・信頼性の欠如について、いくつかの日常生活に喩えることができます。 1.真っ暗闇の新月の夜に「懐中電灯」も持たずに険しい山岳を縦走すること。 2.街路灯がない真っ暗闇の道路を、前照灯の故障した自転車で進むこと。 何の予備知識も持たずに「2mm皮膚切開ばね指手術」を受ける患者さんがいたとすれば、まさにこの心境になるはずです。 昭和54年4月15日の韮崎~佐久市、78km夜間競歩大会がトラウマになり、そのような夢を見ることが時々あります。 韮崎の出発は夜6:00だったと記憶しています。1時間ほどの区間を幼稚園児の遠足よろしく参加者全員で足並み揃えて歩くのです。その時、市内は街路灯も整備されていてきょろきょろと周りを見回す余裕もあり、何の不安も感じませんでした...。 さて問題発生はその後からです。夜8:00が一斉スタートで、夜の11:00を過ぎた頃には清里あたりだったでしょうか?前にも後ろにも人影はありません。当時の国道141号線には街路灯がほとんど無かったと記憶しています。そうです、私は懐中電灯を持参するのを忘れていたことに初めて気づいたのです。これから明日の明け方、東の空が白むまでは真っ暗闇の中を一人ぼっちで走る(実際には歩く)ことになるのです。 足下を照らす懐中電灯やヘッド・ランプが如何に恋しいことか。 こんな時、道沿いのドライブインの明かりが非常に頼もしかったのですが、ドライブインは数えるほどしか点在しません。 同様に、数少ない飲料水の自動販売機の明かりに出会ったときも嬉しかったです。ついでに乾いたのどを潤すために品定めをしますが、全部売り切れでした。私はよほど足が遅かったのしょう、前走者がすでに買い尽くしたあとでした。 明かりにめぐり会えるもう1つの機会は、通りかかる車のライトです。 割と面白いことに気づいたのもこの時です。 懐中電灯を持たない自分にとって「対向車のライト」と「追い抜いてゆく車のライト」のどちらの光が役に立つと思いますか? 追い抜いてゆく車の場合は、車が遠のいて明かりが消えた後でも、前方に浮き上がった道路や風景などの「残像」を頼りに、真っ暗闇の中でも数十歩は進行方向を誤らずに自信をもって歩けます。 もちろん、この理論が通用するのは道路が直線の場合に限ります。道路がくねくねと曲がっていては車の明かりもあまり頼りになりません。実際に国道141号線は私が望むような長い直線部分はほとんど無かったと記憶しています。 暗闇の中では障害物で転んだり道路脇の側溝に足を取られないようにゆっくりと歩を進めるのですが、車のライトによる残像が残っている10~20秒間は「猛ダッシュ」で距離を稼ぐように心がけて進みました。もしこの姿を「天の上から見ている人」がいたとすれば必死の姿を見てクスクスと笑ったことでしょう。 この経験は私が医師になって満2年が過ぎた時期でした。真っ暗闇の不安の中で猛烈にダッシュすると体にはある異変が起こります。そうです私も初めて「過呼吸症候群」を経験しました。手足がしびれ出して呼吸も困難となりました。原因が直ぐに思いあたりましたので、道路脇に横になり、被っていた帽子で顔を覆い、その中に呼気を出し入れして対応しました。15分くらいで元通りに、元気よく歩けるようになりました。 私が「2mm皮膚切開ばね指手術」を行っている姿を第3者はどのように見るのだろうか?と考えることがあります。 これは正しく、真っ暗闇の国道141号線を懐中電灯も持たずに全力疾走している姿に似ている?と。 手術操作を概略で説明します。 A1腱鞘の一方の入口(遠位)はMP関節とほぼ一致しています。掌を触診して腱鞘の位置を予測し、鋼線マーカーをテープ止めしてレントゲン撮影をします。この地点を目指してガイド・ナイフを挿入し、エコー装置でガイド部の位置を確認します。 ガイド部の位置が正しければ、続く操作は腱鞘の切開です。この時の「ガイド部の役割」こそ「車が照らし出した残像」であり、ガイド部の案内により道筋を見失わずに切開が出来るのです。 確かに「2mm皮膚切開ばね指手術」はユニークな術式です。 掌にのせた豆腐を包丁を切るときに「掌を切らずに豆腐だけを切ることが出来る」ことが発想の出発点にあるのです。 ガイド・ナイフの刃は硬質のA1腱鞘だけを切りますが、包丁で軽く押した掌の皮膚と同様で、柔軟性のある皮膚・皮下組織はほとんど切りません。 もちろん術者には手の解剖学の知識が要求されることは勿論です。 近年、インターネットが普及して次のような「質問」と「答え」をよく目にします。 質問:ばね指手術を受けたのですが、どこで手術を受けるたら良いでしょうか? 答え:「手外科の専門医」の医療機関のリンクがありますのでご参考に。 ガイド・ナイフは整形外科医に少しづつ普及しているのは事実です。 しかし、手外科の専門医にガイド・ナイフが普及しているとは考えておりません。 私は、ばね指の最良の手術方法は「ガイド・ナイフ」による「2mm皮膚切開ばね指手術」という信念を持っております。 当院で手術を行い続ける限り、この術式を啓蒙してゆくつもりです。 もうとっぷりと日が暮れました。 皆様にはもう一度、おやすみなさい... 最後の追伸 「白い巨塔」のこと 湯本整形外科の院長がガイド・ナイフによる手術を語るとき、 ①皮膚の切開が非常に小さい とか、 ②手術時間が短くて済む などと強調するが、昔のテレビで似た状況を見たような気がする!と言われそうです。 確かにそうかもしれません。 調べてみると「白い巨塔」は4回テレビドラマ化されています。私はあまり熱心なテレビファンではありませんが、たぶん1978年6月~翌年1月にかけて放映された中の一場面でしょうか、下記の場面が印象的でした。 手術を終えて手術室からで出てきた「財前五郎」医師が、自信の手術の巧さ、早さを自慢するように、 「今日の手術は前回よりも早くて、**分で終了した。」旨の台詞を聞いて苦笑した記憶があります。医師の世界をある意味でデフォルメしたストーリーだったからだと思います。 「湯本の手術も財前先生のようだ」と言われそうですが...。 嬉しいことに当地(長野県、善光寺平周辺)でも私の手術を評価して下さる数名の先生方がおられて手術依頼の紹介をいただくようになり感謝しております。また整骨院の先生方にもよく知られるようになり、同様に手術依頼が増えて嬉しい限りです。 全国的に見てもガイド・ナイフの普及率は決して高くありません。むしろほとんど普及には至っていないというのが実情です。 ただ「ガイドナイフによるばね指手術」は、実際に当院で手術を受けられた患者さんの評価が非常に高くて、知り合いを経由した患者さんの受診も多くなりました。 ばね指は一人の患者さんの複数指に発症することも多い疾患です。今までに1回でも通常のばね指の手術経験がある患者さんが当院で手術を受けられた場合、その回復の早さに一様にびっくりされます。 ばね指手術というのは非常にユニークな手術です。 医師免許を取得したばかりの研修医でも手術を行う事ができます。 一方、患者さんの立場に立つと、手術を執刀する医師の条件として、 ①手術経験の豊富な医師 ②手術の上手な医師 ③合併症を起こさない医師 などを望まれると思います。 ばね指の手術方法は大まかに4種類あります。 1 通常のばね指手術、2cmの皮膚切開。 2 2mm切開ばね指手術(ガイド・ナイフとエコーを用いる、当院) 3 「安永式切腱刀」による手術 4 内視鏡による手術 当院の「2mm切開ばね指手術」は皮膚・皮下損傷がほとんど無く、機能回復が早いことが評価されています。翌日から水を使って手洗いが出来るので主婦などからも非常に喜ばれます。 どの手術を受けるかの最終決断は患者さん自身です。 私は、「2cmの皮膚切開ばね指手術」最良の手術であるとの信念を貫き MyWay を進んできましたし、今後も変わらないと思います。たぶん新月の真っ暗闇の中にいるだけなのかもしれませんが...。 駄文をものすあいだに、もう外は本当の真っ暗闇となりました。 明日も仕事がありますので...。 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。 これで本当に、おやすみなさい! |
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